スピーカーの使用例

フルレンジスピーカーとマルチチャンネルシステム

スピーカーシステムには、フルレンジと呼ばれる低音域から高音域を一つのスピーカーで出力するフルレンジスピーカーと、低音域・中音域・高音域のみの出力を各スピーカーが出力するマルチチャンネルシステムに分けられる。

フルレンジスピーカーには低・中音域を出力するコーンユニットと高音域を出力するツイーター(トゥイーター)と呼ばれるユニットが一つの箱に収められているもの(2weyタイプ)が主である。
ユニットによっては同軸スピーカーというコーンの真ん中にツイーターが付いているものも有る。

これは、パワーアンプからの信号をスピーカーに内蔵されているネットワークで低・中音域と高音域の成分に分離して各ユニットに音を送っています。

マルチチャンネルシステム は、アンプに入力する信号を事前にチャンネル・ディバイダーなどで低音域・中音域・高音域といった音成分に分離させ、其の信号を適正なアンプに入力しアンプ出力を各スピーカーに接続するというシステムである。

マルチチャンネルシステムには2way・3way・4wayと組み合わせる事があります。
その現場によりどのシステムを使用するかを事前に決めておくのが通常です。

また、マルチチャンネルで使用するスピーカーの低音域と中音域・中音域と高音域の再生周波数域を考えチャンネルディバイダーで各音域の周波数のクロスする位置を設定してあげないと其の部分だけ突出したり、逆に聞こえづらかったりと言った事になります。

入力インピーダンス

入力インピーダンスとは、スピーカーの交流抵抗値です。
パワーアンプの出力インピーダンスとマッチさせ効率の良い駆動を心がけなくてはいけません。

PA現場やSR現場などでは主に、低インピーダンスを使用することが多いです。
数値にして4Ω〜16Ωです。

逆にハイインピーダンススピーカーとはどういうものかというと、選挙カーの上についているトランペットスピーカーやデパートや店舗の天井に埋め込まれている丸いスピーカーなどが其の部類になります。

パラレル接続

パラレル接続とは、並列接続のことを意味します。
広いエリアで1本のスピーカーではエリアをカバーできない場合に有用な方法です。

イベントなどで、片側(L側・R側)のスピーカーを2個並べてスタンドに立てている光景を目の当たりにすることがあるでしょう。
1本のスピーカーではお客様に十分な音を届けることが出来ない場合に使用します。
利点としては、パワーアンプをそのスピーカー用にもう一つ用意しなくても済むということになります。

その際に、片方のスピーカーから隣のスピーカーへとスピーカーケーブルがつながれている事があると思います。
その繋ぎ方は、ほとんどがパラレル(並列)接続です。
その際に気をつけなければいけないのがそのスピーカーのインピーダンスです。

例えばエレクトロ・ヴォイス社のSX300は、8Ω300wというスペックになっています。
其のスピーカーをパラレル接続した場合2台を繋ぐと4Ω3台パラレル接続すると約2Ωとなって行きます。

使用しているパワーアンプが何Ωまでを推奨しているかを確認せずにむやみに繋ぐと取り返しの付かない事故につながります。

音響機器を使用する際は、そのスペックとマッチングを確認した上での使用をしましょう。

メインスピーカーとモニタースピーカー

メインスピーカーとは、お客様に対して向けられたスピーカーです。
出来る限り、音が客席全体に届くよう工夫する必要があります。

メインスピーカーは、お客様にステージの音を満遍なく届けるために設置するスピーカーです。
当然、ある一部分のスペースでは音が聞こえづらいといったセッティングはお客様にとっても、主催者にとっても良い状況とはいえません。
贅沢を言えば、前の席はうるさくなく後ろの席までしっかり聞こえるというセッティングが理想です。
予算が無くスピーカーの本数を減らしてしまうと、中抜けという状態が生まれます。

中抜けとは、客席中央前部で音がはっきり聞こえないと言った状況を言います。
スピーカーの音には角度があります。
特に高音域はその角度から外れてしまうと音の明瞭度が半減してしまいます。
それを無視して客席に向けまっすぐにメインスピーカーを置くと前の席中央辺りでは音が聞こえづらいと言った現象が起こります。

もこもこした音しか聞こえないと言った具合になる事もあるでしょう。

其の原因となるのが、高音域の音の飛び方にあります。
低音と言うのは前方ばかりではなくスピーカー横や後方に回り込む性質があるのに対し、高音は高くなればなるほど直線で音が飛んでいきます。

例えば、知り合いと話をしている最中に相手が後ろ向きになってしゃべっている時と振り返った時では明瞭感が違います。

それは、高音が直線で飛ぶ事を物語っています。
直線で飛ぶと言う事は、ツイーターの向いている部分でしか高音は聞こえないと言う事です。

それでは、逆に多ければ多いほどいいのか?
それも一概には言えません。

多くのスピーカーを積み上げると各スピーカーの音がぶつかりあう部分が生じてきて聞こえづらい場所が出来てしまうからです。

この場合、こうすればいいという理論より自分の耳で判断するのが一番です。


モニタースピーカーとは、ステージ上の演者さんやミュージシャンに必要な音を届けるためのスピーカーです。

モニタースピーカーからの音は、 メインスピーカーの音とまったく同じ音が出ていることはほとんどありません。

特にバンドもののモニターになると、ボーカルは全体を欲しがるのに対してリズム系のドラムは合い方のベースを欲しがったりベースはバスドラ・スネア・ハイハットが欲しいという事もあるし、アーティストさんによっては硬い音や低音を効かせて欲しいといった要望も出てきます。

それらの事を調整するためにも機材選定には十分に気を使わなくてはいけません。

スピーカー選びについて

スピーカーを選ばれる際に注意して欲しいのが使い回しが効くかどうかということです。

いつも、 特定の状況でしか使用しないのであればそれほど気に掛ける事も無いのですが、小イベントからコンサート等までを手がけようと思うのであれば、コンサート系ではモニターにもなり小イベントではメインスピーカーにも使えるスピーカーを数揃えたほうが使い回しが効くと言う事です。

それを踏まえたうえで、モニターにもメインにもなるスピーカーの特徴を挙げてみたいと思います。
◇スタンドに立てられる
  小規模音響時にはスタンドに設置する場合が多いから

◇ある程度出力が大きいものである
  コンサート系のモニターでは、メインに負けてしまわないように最低でも8Ω300w以上のものにする

◇持ち運びが一人でできる・コンパクトである
  小規模音響でも一人でスピーカーをセッティングでき、舞台においても容易に移動可能なものが良い
  また、運搬時にもかさばらないものを選んだ方が良い

◇台形型のスピーカーである
  モニターで使用する場合、床置きにしたときツイーターがアーティストの耳に向くようにセットする必要があるため